クリニックホームページリニューアルとともに、院長によるブログを始めました。精神療法（カウンセリング）をする上で考えていることを中心に、今は苦しいけれど前に進みたい方に少しでも参考になるような記事を書いていきたいと思います。

　ブログ開始にあたって、院長矢吹がなぜ精神療法（カウンセリング）の専門クリニックをしているか、まずは少し書きたいと思います。医師である矢吹が精神療法（カウンセリング）専門クリニックをしていると知って、どうして普通の（保健医療機関で薬も出す）心療内科ではなく精神療法専門にしたのですか、と聞かれることがよくありました。答えは一言で言うと、「精神療法は人生の役に立つ」と確信するようになったからです。

　矢吹ももちろんはじめは「普通の」心療内科や精神科の現場で臨床をし、研鑽をしてきました。その中で治療技法のひとつとして精神分析に由来を持つ精神療法に出会い、人は生まれ育った環境に影響を受けて考え方や行動を身に着けていくこと、場合によってはその生き方の癖が自分自身を苦しめること、しかし精神療法を通じて自分を知り、その生き方の癖を変えていくことができること・・・を知っていきました。学びを深めたくて国内留学、さらに米国メニンガークリニックへの留学をし、自分自身も精神療法を受けて、それは確信になっていきました。

　帰国後、学んできた精神療法を心療内科臨床の中で役立てたいと思いましたが、「普通の」病院臨床の中で医師に求められているのは、たくさんの患者さんを短い時間の中で診療することだという現実に、あらためて直面することになりました。それはとても大事な仕事ですが、自分はこの、人生を良い方向に変える力を持つ精神療法を、必要な方ひとりひとりにしっかりと時間をかけて提供していきたい。その思いから、まずは心理療法室として、そして今では精神療法（カウンセリング）専門のクリニックとして仕事をしています。必要な方の力になれることを願っています。

　4月になりました。今年は桜が早かったですね。4月と言えば新年度、新しい生活に入る人が多くあります。入学・新学期・就職・異動・・・期待と不安を胸に新しい一歩を踏み出した皆さんです。

　一方で、新しい生活に入りたかったけれど入れずに、4月を迎える人も少なからずおられますね。そういう人には、春の明るいニュースはちょっと辛いかもしれません。

　他の人と同じタイミングで次のステップに行けることは多くの人にとって安心なことです。そうでないと、遅れたと感じて、焦ったり、暗澹たる気持ちになってしまう人もいます。

　でも、精神療法（カウンセリング）で皆さんとお会いしていると、人それぞれ「ペース」や「向き不向き」があることを実感します。速ければいい、高ければいい、というものではない、その人に合ったペース、合ったこと、です。

　しかし、そもそも人と同じでなくていいと気付くまでが一苦労です。どうして自分はできないんだ、と自分を責めたり、あるいはどうしても自分の子どもを、自分が良いと思う方向にたどり着かせようとしたり。そういう「無理」から良いことは出てきません。自分に合わないことを無理に続けている中でうつ的になったり、身体に症状が出てくることは少なくありません。

　自分は今どうなっている？自分がしたいことは？自分が今できることは？周りの喧噪はちょっと置いて、そっと自分に聞いてみましょう。

　今年も残すところ数日となりました。今年の年末年始はどこで誰と過ごすでしょうか？この時期、いつもは離れている実家で過ごす、という人も多いでしょう。実家に帰ることが楽しみな人だけでなく、憂うつな人、あるいは帰りたくないから帰らない、帰りたいけれど帰れない、という人もいます。
　自分が育った家庭というのはいろいろな思いを持つ場所です。そこに温かい、心安らぐ思いを持てるのは幸せなことですね。心理療法（カウンセリング）では、実家が束縛される場所であったり、良い思いと嫌な思い、複雑な気持ちを抱く場所であるということもよく聞かれます。良かれ悪かれ、育った環境は自分の生き方に影響を与えています。
　今年の年末年始はどんな思いを持つでしょうか。どんな思いも否定せずに自分の気持ちとして大事にすることができると良いのですが。
　来る年が良い年になりますように。